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4558オペアンプの内部回路を解析する


電子回路関係の講義を受けていて、半導体の復習となる素材を先生から頂いたのですが、その中でも有名な 4558 オペアンプの等価回路を投下され解析したくなりましたのでそのレポートです。

こちらのオペアンプ回路は、かの先駆者、uA741 よりも簡単で理解しやすいものなので、自力で解析したついでにご紹介します。

このICについて

Hi-Fi オペアンプとしてオーディオ用アンプに使う用途、また工業用のセンサ値増幅等、幅広いアプリケーションに対応できる物となっています。現在秋月電子にて、1個25円で販売されていて、しかも2回路が 8pin のICに封入されているものです。

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参照データシート

Texas Instruments の RC4558 を見てみます。と言っても電気的特性には興味がないのでいきなり内部回路をご開帳します。

いいですねぇ。では順に見ていきまししょう。

回路解析

上部カレントミラー

まずは基準となる電流をほぼそのまま別ノードにコピーするカレントミラー回路です。赤丸で囲った部分ですね。

一番右のトランジスタに注目すると、ベース-コレクタ間がショートされています。この構造を取るトランジスタのエッジに流れる電流が基準電流源となります。ひとまずこの直下のトランジスタ(ベースが逆方向ダイオードに接続されているもの)は導通とすると、以下に示される電流が左、中央のトランジスタのエッジにコピーされます。
$$\frac{V_{cc+} – V_{cc-} – V_{BE}}{R}$$

過電圧保護回路(?)

追記(2018/6/22):
どうやら JRC のデータシートを見たところによると(新しいもの)、逆方向接続ダイオードがツェナーでした。コメントでご指摘の通りカレントミラーの定電圧によるドライブと考えると確かにこちらのほうが回路として良さそうです。僕も多分ご指摘通りだと思います。以下はただのダイオード逆方向接続と仮定したときの苦しい解釈として残しておきます。

こちらは n-ch JFET を利用したものです。FET といえども MOSFET とは違っていて、こちらはソースとドレインがn型半導体、ゲートがp型半導体でできているものです。MOSFET と異なり JFET はソースとゲートがショートされていないので、上下対称に使うことができます。動作原理ですが、ゲート・ソース間に負電圧をかけることによりpnダイオードの空乏層形成と同じ作用がなされ、電流値が減ります。増えるのではなく減るのがポイントです。

該当の箇所ですが、以下の赤枠です。

実際に思考実験してみましょう。Vcc+ と Vcc- の電圧がとても大きいと仮定します。この時はドレインが正電圧、ゲートが負電圧です。前述の通りソースとドレインは対称に使うことができることに注意すると、大きな電位差によってドレインとゲート間の空乏層が広がり、ターンオフしてしまいます。よって高電圧印加に対して過電流の貫通を防げました。

それだけではなく、たった今上で述べたカレントミラーにも影響します。先程は電流源部分のトランジスタ導通を仮定しましたが、もし JFET がターンオフしていなければ Vcc+ から電流が流入し JFET のドレイン・ソースを通って電流がトランジスタのベースを流れます。これによって JFET がオンの状態ではカレントミラーを基本として各回路が動作しているとみなせます。ちなみにこの JFET の下側の逆方向ダイオードですが、そもそも JFET のために電圧がほしいのであって、電流はそれほどいりません。よって ドレインからソースへの電流を阻止する役割があるのだろうと推測されます。

差動増幅回路 with カレントミラー

そもそも差動増幅回路はカレントミラーを必要としますが、もう1ペアのカレントミラーを付けることで、シングルエンド出力に対して利得を倍増できます。この部分全体が以下です。

カレントミラーを上部につけ、更に下部のカレントミラーで倍増効果を生み出しています。なんか「倍増効果」って健康番組が使ってそうな言葉ですね。この回路で下部にコンデンサが付いていますね。コンデンサといえば交流ショート、直流断線という効果のあるものなのですが、おそらくここで 位相補償 をしているのではないかと考えます。
また、IN- のコレクタ側から出力を得ていますが、それぞれ次の項で説明しましょう。

エミッタフォロワを通したエミッタ接地増幅回路

出力から一度バッファを通してエミッタ接地増幅回路にて更に信号を増幅しています。回路図は以下。いきなり枠がしょぼくなっていますがご了承を。

枠の中央がエミッタフォロワ(コレクタ接地回路)です。そこからエミッタ接地増幅回路を通すことで更に増幅度を稼いでいます。このエミッタ接地のトランジスタのコレクタには何がつながっているかというと、ちょっとばかしややこしいですが一番上には先ほど示したカレントミラー回路のコピー先となっています。更にいうとこれは高抵抗の電流源とみなせるので、この高抵抗部を負荷としてえげつない増幅度をえることができるというわけなんです。しかもエミッタには抵抗を入れていませんから、もろ hfe が影響して大きく増幅することができるのです。

エミッタ接地増幅回路の上部: カレントミラー負荷とダイオード

それではトランジスタの上部を見ていきましょう。

まずは一番上のカレントミラーです。上でも言ったとおり、えげつない増幅度を得るために必要です。続いてですが、その下です。こちらはダイオード2つとなっています。簡単に解析しましょう。

こんな感じで、差動増幅回路からの出力に対してカレントミラー方向に 2Vbe だけ上がっています。これは後の AB級バッファ回路に用いるためのバイアス生成です。クロスオーバー歪をなくすための工夫ですね。
ということで、この上部回路はカレントミラーを負荷としたエミッタ接地増幅回路、そして AB級バッファ回路の前段を同時に兼ねている部分になります。

AB級バッファ回路後段と出力抵抗

こちらは電流増幅を行う部分です。カレントミラーに関係なく、バイアスに重畳された交流電圧を増幅度ほぼ1で出力するという回路です。微小な入力電圧に対して電源から直接大電流をドライブできるので、バッファとしての役割を果たしています。真ん中の抵抗はおそらくトランジスタの性能差を相殺するためのものでしょう。

出力に抵抗があることで、出力電流が下がってしまうじゃないかという指摘があると思うのですが、それは当然で、この IC は大電力の出力を想定していないからです。現に上で述べた JFET の制限回路もあります。もしパワー素子としての出力を意図しているのであればこの回路は全く付加されなかったでしょう。

ふぅー、というわけでとりあえず定性的な解析は終わりました。結構学科のお勉強って役立つんですね。楽しい。一方 uA741 オペアンプの解析は難しい。
今回対象にした 4558 は結構簡単で、かつ周波数特性もそこそこいいということですから、とてもいい経験になったと思います。今回感じたこのアンプの特徴は

  • 位相補償部をカレントミラーにつけている
  • ほとんどのトランジスタについてエミッタ抵抗を付加することで温度安定性を獲得
  • JFET による保護回路

だと感じました。
おそらく付いてこれた方は電子系でなきゃあまりいないと思いますが、ぜひともググって見てください。アナログ回路の勉強になると思いますので。

コメント

  1. 匿名 より:

    [過電圧保護回路]ですが、間違いですね。ダイオードはツェナーダイオードです。
    ツェナーダイオードの横棒のヒゲが元の回路図が古くて消えてしまったんでしょうか?
    NJM4558の回路図だとヒゲがあります。
    まあ、JFETの定電流動作でツェナー電圧を安定させて可憐とミラーの基準電圧としているという感じでしょうか。これで±数V~±15Vまで安定してバイアスが出来ます。

    • shima-529 より:

      はい、新日本無線のデータシート(2013年版)では確かにツェナーですね。とするとご指摘の通りの動作だと納得できます。
      記事中に参照したデータシートはTIのRC4558のものでして、こちらは2001年版とやや古いです。こちらでは確かにただのダイオード逆方向接続なんですよ。

      とはいえ、わざわざここになんでこんな接続?と思っていたフシがあるのでご指摘のような動作だと、そちらの方が納得できるといえばそうな気がします。勉強になりました。