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VCO的なのをサクッと作ってみる

久々にアナログ回路です。最近発振回路に興味を持ち始めまして、その興味の1つに VCO(Voltage Controlled Oscillator) というのがあるんです。その名の通りこれは入力電圧によって出力波形の周波数を変化させるというもので、なんだこれはとやってみたくなりました。


参考図書は CQ出版の この黒本です。どうやらもう絶版でオンデマンド版しか無いようですね。オンデマンド版は通常のものに比べて600円ほど高いのでアレだなぁ...と思っていたら、秋葉原の書泉に1冊だけありました!迷わずご購入〜〜

カチッとしたものを作るのは面倒なので、どこにでもある回路を使ってブレッドボード上で簡易 VCO を作ってみます。オペアンプとかトランジスタとか使うのもオツなのですが、ひとまずシュミットインバータでやります。回路図はひとまずこちら。BSch3V というのを使ったのですが、まだ不慣れです。

用意するものと解説

シュミットインバータ

おなじみ 74HC14 です。「シュミット」と付いているのはヒステリシス特性のあるものと考えてもらえばいいです。これをどう使うというと、インバータの入出力をショートさせたものを考えてみてください。すると電圧レベルに矛盾が起こって、発振し始めます。もっと言うと、IC 内部で伝達遅延があるので、その時間分だけ遅れてその矛盾の対応がされるんですね。それじゃあその遅延成分を外部回路として付けてしまって、周波数をコントロールすればいいじゃんというのが発振回路の発想の基礎です。

ここで IC の出力から直列に抵抗器、コンデンサとして、コンデンサの片側を GND に置いたとしましょう。

するとこのループについて回路方程式からチャージ時間が以下に比例すると分かります。

$$\tau \propto RC$$

ここで、ICの出力インピーダンス、内部容量は外付けした部品に比べて十分に小さいと仮定しました。なお 74HC14 を使うのであれば、この RC の比例係数はほぼ1と思って結構です。

バラクタダイオード

容量可変ダイオードのことです。またの名をバリキャップとも言う。秋月で1本20円で売ってます(高い)。
ただのダイオードと何が違うかと言うと、逆方向電圧を印加すると容量可変のコンデンサになるということです。順方向電圧を加えるということは想定されていません。

半導体の講義等でやると思いますが、一般にpn接合の半導体に対して逆方向電圧を印加するとハイインピーダンス状態になるだけでなく、空乏層形成によるコンデンサ形成となります。このとき容量は印加電圧に依りますから C(V) という関数形で書け、Q=CV より

$$C = \frac{Q}{V}$$

という式で書けます。なお小信号においては振幅微小ということで重畳した直流電圧のみに比例すると考えてOKです。バラクタダイオードはこの容量変化が大きいダイオードであり、まさに VCO 用に作られたものです[要出典]。

LCフィルタ

入力交流電源Viに対してコイルL、コンデンサC、GNDと順につないで、コンデンサの電圧を見たものを LC フィルタ と呼びます。下の回路図で左側から入力して右側から出力をします。

実際にゲインを導出してみましょう。インピーダンスの分圧によって出力電圧(=コンデンサ両端電圧)は以下のようにサクッと求められます。

$$v_o = \frac{\frac{1}{j\omega C}}{j\omega L + \frac{1}{j\omega C}}v_i = \frac{1}{1-\omega^2LC}v_i$$

よって振幅比のみを見るにはこの絶対値を取ればいいですから、

$$\left|\frac{v_o}{v_i}\right| = \left|\frac{1}{1-\omega^2LC}\right|$$

で行けるわけです。ここで (分母) = 0 を考えてみましょう。すなわち周波数fで見ると

$$f=\frac{\omega}{2\pi} = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$

ですね。このときにはゲインが無限大となっていることが分かります。よってこのfに関して強くゲインを持ってくれ、それ以外では減衰するであろうということが以上の議論から分かります。

それでこれがどうなるかと言うと、これによって周波数選択性を持たせることができ、方形波から正弦波に変換する回路として使えるんです。
方形波はその周波数成分fの正弦波と、(2n+1)f の正弦波の足し合わせでできています。基本周波数f の振幅を1とすると、(2n+1)f 波の振幅は 1/(2n+1) です。まあ LC フィルタで鋭くその他の成分をカットする必要はないんですが、原理的には方形波から正弦波にすることは可能ですね。

やるぞ

と言うわけで取り敢えず組んで見ました。先程の説明を一部無視して、バラクタは並列ではなく1つだけ、LC 回路は定数を合わせるのが非常に面倒なため作成しないという方針にします。。。

以下、バラクタと印加直流電圧を変えたときの周波数変化です。

バラクタ: 1SV136A

秋月で売っているアキシャル型の製品です。

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このときのオシロ波形を示します。使っているオシロが安物で、おそらく MHz オーダーの計測に向いていないため、数 100kHz オーダでも波形がきちんとしているか微妙です。参考までに。

0V印加時

410kHz

3.3V印加時

950kHz

というわけで、3.3V電源でやる場合は 410kHz から 950kHz の波形を選択できるということがわかりました。

バラクタ: BB910AF

aitendo で売っているトランジスタのパッケージに入っているバラクタです。どっちがpかnか分からんのでいつも適当に挿していますw

●概要●機能・仕様ダイオードの一種で、端子に加える電圧によって静電容量が変化するダイオードである。可変容量ダイオードやバラクタとも呼ばれる、VR:30V、Cd(0.5v):38pF、Cd(28V):2…

0V印加時

209kHz

3.3V印加時

586kHz

こちらも、3.3V電源でやる場合は 209kHz から 586kHz の波形を選択できるということがわかりました。こちらのバラクタは容量が大きめなので電荷のチャージに時間がかかって周波数が小さくなります。こちらを2つ並列に繋げれば 100kHz も得ることができて、とてもお手軽です!

ということで、74HC14 を使うだけでいい感じにできてしまいました...!さすが高速CMOSロジックです。
使っているオシロが1MHzを超えるとまともに読み取れないので、今度お高いオシロを借りて実際の波形を見てみたいですねえ。